ジロ・デ・イタリア2024 stage16-21リキャップ

ジロ・デ・イタリア2024 stage16-21リキャップ

  • イベントレポート

ジロは終着点ローマへ。スペシャライズドライダーたちが駆け抜けた最終週をプレイバック。

グランツール最終週。それは21日間の極限状態に置かれた選手たちが演じる群像劇のクライマックスだ。波に乗って勝利を重ねる選手もいれば、思わぬコンディションの落ち込みに苦しむ選手もいる。涙とともにレースを去る選手もいれば、まだ手にしていない栄光を掴もうとあがく選手もいる。

舞台に上がったからには、幕が下りる前に誰だって中心に立ちたいものだ。ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)も野心とともに3週目に突入したひとり。序盤の第3ステージで勝ったものの、その後はチャンスを掴めずにいた。しかし、厳しい山岳ステージの向こうに栄光が待っていた。第18ステージは彼のものになったのだ。

再び最速を証明したTarmac SL8。メルリールにとっては嬉しい今大会2勝目。

もちろんメルリールひとりの力で掴んだ勝利ではなかった。この日の終盤のレイアウトは特に複雑で、チームは総出でメルリールのために好位置を守り続けた。メルリールは最終コーナーで後方に埋もれかけたものの、慌てずにフィニッシュに通じる活路を見つけ、自分のタイミングで駆け切った。レース後インタビューで「僕を嫌っている人は残念がるだろうね」と茶目っ気と皮肉をこめた言葉を残したメルリールは、洒落た役者のようだった。

世界最速のレースバイクTarmac SL8について詳しく>

そんなメルリールは最終日のローマでも素晴らしい立ち回りを見せた。いくつものコーナー、そしてフィニッシュ直前には200mの石畳が待ち受けるトリッキーなコースでの争いは混沌を極めた。最後の最後でスプリントトレインからはぐれてしまったメルリールは、得意の石畳に全てを賭けた。最高時速70kmに達する驚異のロングスプリント。シクロクロッサーであり石畳と丘のクラシックレースであるノケレ~クールセを3連覇中のメルリールに並ぶことができる選手はいなかった。かくしてローマという最高の舞台で大会3勝目を決め、表彰台へ上がったメルリールは、最高の形でジロ・デ・イタリアを締めくくったのである。

これで大会3勝目。Tarmac SL8が勝ち切る自信を与えてくれた、とメルリールは語っている。

ローマで表彰台に上がったのはメルリールだけではない。全力全開の走りで大いにレースを盛り上げたジュリアン・アラフィリップ(フランス)は、スーパー敢闘賞に輝いた。
平坦、山岳、丘陵とあらゆる地形で大胆なアタックを仕掛け、大会中逃げに乗った回数は実に8回。つまり3日に1日は逃げに乗っていたことになる。勇敢な走りは人々の胸を打ち、ステージごとに一般投票で選ばれる敢闘賞も4回受賞している。

遅いジロデビューを果たした千両役者は、2週目に挙げた鮮やかな逃げ切り勝利とともに、ファンの愛をも勝ち取ったと言えよう。

軽量で空力性能に優れたS-Works Evade 3(ヘルメット)もアラフィリップと一緒に走り続けた。  

あらゆる地形で選ばれるS-Works Evade3について詳しく>

最後に、ローマでの誉れあるひとときを楽しんだ3人目のスペシャライズドライダーについて触れておこう。
ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)は自身初となるグランツール総合表彰台に登った。マルティネスより高い場所に立ったのはレースを支配したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)ただひとり。価値ある2位である。

子どもの頃から夢見ていたグランツール表彰台を叶えたマルティネス(写真左)

今季からチームに加入したマルティネスにとっては、初の大舞台だった。
グランツールで初めて総合エースの役割を演じるために重ねてきた周到な準備は実り、このジロはまさに晴れの舞台となった。昨年総合2位にして元チームメイトであるゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)と2度の個人タイムトライアルで順位を入れ替えながら争い、得意の山岳で勝負を決めた。
雪と雨でコース短縮となった第16ステージ、そして1級山岳モンテ・グラッパを2度登る第20ステージ、終盤の勝負所で果敢な走りを見せるマルティネスは間違いなく今年のジロ・デ・イタリアで2番目に強い選手だった。

雨の山岳ステージではグリップ力に優れたS-Works RapidAirタイヤがマルティネスを支えた。

伝説的と言えるグリップ力を持つGripton T5コンパウンドを使ったS-Works RapidAirについて詳しく>

ジロというバラ色の祝祭が終わった34日後に、同じイタリアからひまわり色のツールが走り出す。そこには初めてのツールに挑むレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の姿もあるだろう。季節は夏へ。ツールの後には、パリ五輪が待っている。


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【筆者紹介】

文章:池田 綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦と自転車旅を愛するサイクリングライター。名前の通りジュリアン・アラフィリップの大ファン。

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