西の地獄 “普通の”サイクリストたちは300kmを走破できるのか?!
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スペシャライズド北海道エクスペリエンスセンターで開催されたクレイジーなロングライド企画“北”の地獄。これに触発された大阪エリアのスタッフが急遽立ち上げた300km超のロングライドチャレンジ企画がこの”西”の地獄である。
予定ライドコースは午前4時にスペシャライズド神戸をスタートして姫路まで向い、温泉で有名な城崎を目指して北上。
日本海を一目見たあと南下して、丹波・丹波篠山を通過し、山あいを縫うようにして猪名川に至り、スペシャライズド江坂へゴールする総走行距離 約310km 獲得標高1700m。
そして今回チャレンジするメンバー5人の中で一度に300km以上のライドを走り切ったことがあるのはたった1人だけ。
その1人を除けば、多少体力に違いはあれど“普通の”サイクリストを自称しても問題ないくらいの走力である。果たして全員は無事走り切ることができたのか…。
目次
火曜日閉店から集合まで
ライドを決行したのは店舗定休日の水曜日、つまりメンバーの中には火曜日しっかり店舗で働いてそのまま”地獄”に足を踏み入れるスタッフも多くいる。
単純に300kmライドすることだけが地獄ではなかったのだ。
スペシャライズド神戸から姫路まで序盤の約60kmは比較的交通量の多い幹線道路を走る。朝の通勤ラッシュに巻き込まれないために午前4時スタートとなっているが、事前のバイクセッティングやブリーフィングの必要もあるため、集合時間は草木も眠る午前3時である。
睡眠不足はライドの安全に大きく関わってくるため、メンバーたちは店舗閉店後足早にスペシャライズド神戸付近の仮眠が取れる施設へ。
バイクセッティング
実際には午前3時より早くメンバー全員集合していた。
各店舗から持ち寄ったテストバイクのRoubaix SL8(ルーベ SL8)にペダルやサドル、ホイールなどを手際よくセットアップしていく。
店舗ではメカニックやフィッターのため、Retül Fitのデータを元にサドル高やセットバックなどをそれぞれのバイクに落とし込んでいくのも鮮やかだ。
ここで興味深かったのはライドメンバー5人中5人がMirrorテクノロジー採用のサドルを持参していたこと。
S-Works Power Mirrorが2人、S-Works Romin EVO Mirrorが3人。西の地獄のためわざわざマイバイクから外して取り付けしていた。
なるべく携行する荷物を減らすため、工具・予備のタイヤチューブ・交換用ホイール・寒さ対策のジャケット類など、備えすぎなほどの機材たちをサポートカーに積み込み準備完了。
午前4時ライドスタート
普段では絶対に会わない時間に顔をあわせているためか、奇妙なほどの場の盛り上がり。結果ブリーフィングが長引きスタートは10分押すことに。仮眠を取ったとはいえ深夜の特別なイベントはどうしても浮き足立ってしまう。
車やバイクなど他の交通からの被視認性を上げるため十分な明るさのライトを前後に装備し、ライドスタート。
まず目指すは約60km先に位置する姫路。国道2号線を淡々と西へ。
しかしここで思わぬトラブル。震えるほど寒いのである。
ライド決行は11月も半ばなので当然といえば当然であるが、事前に確認した天気予報では当日の最低気温10度。しかし実際には予報以上に気温が下がりサイクルコンピューターには”4度”と表示される。
先立ってスペシャライズド北海道エクスペリエンスセンターで開催された”北”の地獄では夜でも11度だったと聞き及んでいる。開催時期の違いもあるが、地獄は関西の方が北海道より寒かった。
建物の多い神戸市街地を走っている間はまだ耐えられたが、須磨や明石といった海岸線を走ると風が強く気温も相まって体力を奪う。このままでは先が思いやられると、急遽サポートカーを呼び寒さ対策のジャケットをいそいそと着込むことになる。
夜は交通量が少なくロードバイクで走りやすいとはいえやはり幹線道路。信号で停止することも多く、寒さ・暗さも手伝いストレスフルな区間だ。
午前7時 姫路到着 約60km地点
空が白んでくる頃に加古川を通過し、予定より若干遅れて最初のチェックポイントである姫路に到着。
当日はスペシャライズド大阪エリアの各種SNSで実況も行なっていたため、あわよくば世界遺産である姫路城の前で記念撮影…などと考えていたが、何をおいても朝食が優先である。
おのおの食事と温かいドリンクで心と身体を一度落ち着かせる。
日が昇るまで先頭を牽いていたスタッフたちは、暖房の効いたサポートカーの中でしっかり暖をとった。
300kmを走り切るためのペーシングのため、普段のライドより運動強度が低く体が温まり切らなかったのも響いているようだ。
一息ついた後、次のチェックポイントを確認し寄り道せずすぐに出発。
日が昇っても気温自体はそこまで上昇せず、ジャケットなどは夜間走った装備のまま走り出すことに。
次のチェックポイントは国道312号線をひたすら60kmほど北上した先にある養父(やぶ)だ。
信号の少ないワインディングロード Roubaix SL8(ルーベ SL8)の本領発揮
目的地を同じくするJR播但線を常に横に見ながら北上する。
姫路方面へ南下する車は多いが我々が向かう方向へはほとんどなく、早朝に出発したのが間違いではなかったことを確信した。
走り出して気がついた信号の少なさ。起伏も少なく、一定のペースで走りやすい。まだまだ先は長く体力の温存が必要な局面にこの走りやすさはありがたい。
路面は少し荒れていたが、そこはRoubaix SL8の本領発揮である。
フロントの新しいFuture Shock 3.0とリアのAfterShock テクノロジーによって、アスファルトのひび割れや凹凸からくる突き上げなどをほとんど感じることなく走れる。
標準でセットアップされている32CのS-Works Mondoもいい仕事をしている。
S-Works Mondoは硬い乗り味で鈍重そうな見た目に反して、軽快な走行感で気持ちよくバイクが進んでいく感覚がある。
そしてエアボリュームに優れることとFuture Shock 3.0・AfterShock テクノロジーも相まって、Roubaix SL8は魔法の絨毯かのような抜群の乗り心地である。
今回のように初めて走る道であっても必要以上に路面を気にしなくていいので、身体的にも気持ちの面でも疲れにくいのは非常に心強い。
道の駅 養父 約120km地点
朝来のじわりと登る旧道を抜け、雲海で有名な竹田城跡を経て、約120km地点の養父へ到着。
合間合間で細かく休憩・補給はとっているものの現時点で120km走っているため、ライドメンバーの表情にも少し疲れの色が見え隠れるする。
それもそのはず。道の駅養父到着時点で11時30分。休憩を除いたとしてもスタートから6時間以上はバイクの上にいる計算だ。
加えて巡航速度をやや上げてきたことも少し響いているだろう。
姫路に着くまでは予定の時刻より若干ビハインドだったが、ここまでの区間で大きく巻き返しほぼオンタイム。(もちろん信号などが少なく一定ペースで走れているというのもあるが)
一度しっかりと休憩をとり身体をいたわる。
普段から自転車通勤で休日にも走りに行っているメンバーばかりで人並みにはロードバイクに親しんでいる。とはいえ、やはり日々の通勤とロングライドは全くの別物である。
体力的にはまだまだ十分ではあるが、普段とは異なるバイクで異なる乗り方をしているためサドルポジションを調整するメンバーも。今回のライドは店舗の試乗車を持ち出しているためマイバイクではないことがほとんどだ。
突然の降雨
しっかり休憩をとった後は日本海までつながっている円山川沿いで淡々とペースを刻む。
川沿いのライドは行きも帰りも向かい風に遭遇する確率が高い気がするが、幸運にもほとんど強く風が吹くことはなかった。
朝の寒さ以外は天候にも恵まれ順調に走行距離を伸ばしていたが、豊岡に突入したあたりで少し気になる景色が視界に入る。遠くに見える山の頂に黒い雲がかかっているのが見えた。
このまま何事もなくライドできればと思っていたが、サポートチームから雨の報が入る。見えていた黒い雲はしっかりと雨雲で、このまま順調に進めばちょうど雨とぶつかる予報になっているらしい。嫌な予感はなぜこうも当たるのだろうか。
雨雲が進路から逸れることを祈りながらペダルを回し続けたが、祈りは虚しく見事に雨に打たれてしまう。それもかなりの勢いの雨である。
激しい雨と前を走るバイクから巻き上げられる水によって、あっという間にウェアは濡れタイツやビブも中までしっかり浸水した。夏や春であれば走っているうちにウェアが勝手に乾くが、残念ながら今は晩秋で気温はこれから下がっていく一方である。
実際に雨に打たれたのは30分ほどの短時間であったが、序盤とはまた異なった寒さに苦しめられる。
さらに間の悪いことに、サポートチームからの情報でこれから向かう城崎で雷雨の予報も出ているとのこと。
城崎にて
雨の中を走りつつ、今後ライドを続けるかの相談を行う。
もともと300km走り切るためのペースで走っているため全員体力的には問題がない。
気持ちの面でもまだまだ大丈夫。むしろ残り距離が半分を切ったことで余裕すら生まれてきた。
しかし雷雨の予想が気がかりだ。いくら”地獄”を冠しているとはいえ、雷に打たれては笑い話にもならない。
加えて雨に打たれているのもある。すでに昼も過ぎ、これから気温は下がる一方の中濡れたままのウェアで走り体調を崩すのもよくないだろう。
もしリタイアするのであれば第3チェックポイントの城崎がちょうどいい。
特急こうのとりが城崎から大阪まで通っているため簡単に帰ることが可能だ。バイクはサポートカーに預けてしまえばいい。
ここまできたなら多少無理してでも走りきりたい気持ちが7割、リタイアしてもいいかなという弱気が3割。
チャレンジを続けるもペダルを止めるのも、何はともあれまずは城崎まで向かわねばならない。
春のリベンジを誓う
スペシャライズド神戸からスタートし160km、第3チェックポイントである城崎まで辿り着いたメンバーが出した答えはDNF。
消えない雷雨予報と土砂降りで濡れた身体、これから陽が落ち冷えることなど総合的に考えた結果、無念のリタイアである。
安全に帰ることが最優先事項と言われてしまってはぐうの音もでない。体力と気持ちにはまだまだ余裕があっただけに余計に悔しい。
そしてその判断を下した直後から晴れ間が覗くとは、なんとも皮肉なことである。
ほんの少し時間や場所・条件が違えばもっと遠くまで、それこそ300km走りきれていただろうがこればかりは仕方がない。
暖かい季節の”地獄”リベンジを強く胸に抱きながらバイクを降りた。
リベンジの地獄をぜひ期待していただきたい。
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北の大地を300km走破!”北”の地獄 >> こちらから
“北”の地獄 挑戦者4名へのインタビュー! >> こちらから
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