New Year, New Goals スペシャライズドサポートチームの2025シーズン展望

New Year, New Goals スペシャライズドサポートチームの2025シーズン展望

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スペシャライズドが2025年サポートするワールドツアーチーム(ロードレースにおけるファーストディヴィジョンチーム)は、男子2、女子3の計5チーム。シーズン本格始動前に、各チームの動向を確認しておこう。

©CAuldPhoto

男子

スーダル・クイックステップ(ベルギー)

勝利数ランキング上位常連の強豪チーム。
愛称である「ウルフパック(狼の群れ)」は、集団で狩りをする狼のように個の力とチームワークを組み合わせて戦う彼らのスタイルに由来する。

昨年の宇都宮ジャパンカップに出場したスーダル・クイックステップ。熱い走りで日本のファンを魅了した。©Keisuke Kitaguchi

2024年はチームの柱であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がツール・ド・フランスデビューを飾り、堂々の走りで総合3位に入賞、新人賞も獲得。
さらにパリ五輪では男子として史上初となる個人タイムトライアルとロードレースの二冠を達成。世界選手権個人タイムトライアルでも勝利し、大成功と言えるシーズンを送った。

パリ五輪ロードレース勝利をTarmac SL8とともに祝ったエヴェネプール。

選手たちの相棒として世界最高峰のレースを戦うTarmac SL8について詳しく>

ジュリアン・アラフィリップ(フランス)がチームを去り、今年から絶対エースとしての重責を負うエヴェネプールのために、山岳での護衛部隊として、昨年ジロ・デ・イタリア区間勝利を射止めたヴァランタン・パレパントル(フランス)、7年ぶりの古巣復帰となるマキシミリアン・シャフマン(ドイツ)らが加入した。

2025年は「チーム・レムコ」のさらなる飛躍が期待されるが、不運なことにエヴェネプール本人は昨年12月初旬のトレーニングライド中に交通事故に遭い、現在療養中。
間もなくリハビリを開始し、4月のアルデンヌクラシックでのレース復帰、7月のツール・ド・フランスまでの完全復活を目指す。

エヴェネプールが欠場を発表しているグランツール初戦ジロ・デ・イタリアには、彼の女房役として昨年の躍進を支えたミケル・ランダ(スペイン)がエースとして出場する。
その後のツール・ド・フランスでは、再びエヴェネプールの副官を務める予定だ。

昨年エヴェネプールを献身的に支えたランダが、ジロ・デ・イタリアではエースとして走る。

チームのもう1本の柱はスプリンターのティム・メルリール(ベルギー)

昨シーズンはチーム内最多となる16勝を叩き出した。個人の勝利数としては首位のタデイ・ポガチャル(25勝)に次ぐ記録であり、世界最速スプリンターとしての地位を確実にしている。

冬季はシクロクロスも走るタフなメルリールは、ロードレースではヨーロッパチャンピオンジャージを着用する。今年はエヴェネプール、ランダとともにツール・ド・フランスに出場予定だ。

2024年シーズンを通じて安定的に勝ち星を挙げ続けたメルリール。チームにとっては大変ありがたい存在だ。

スプリント部隊には、メルリールの他にもプロ1年目の昨年5勝を挙げた新星ポール・マニエ(フランス)、そしてルーク・ランパーティ(アメリカ)ら頼もしい若手が揃っている。

今年加入のイーサン・ヘイター(イギリス)はスプリントとタイムトライアルに強く、登りもこなす選手だ。ロードレースに加えてトラックレースでも活躍するスピードマンで、イギリスチャンピオンジャージでウルフパックデビューを飾る。

イギリスチャンプのヘイターのS-Works Evade3には英国国旗があしらわれている。

軽量で空力性能に秀でたヘルメットS-Works Evade3について詳しく>

復権を狙う石畳クラシックはパスカル・エインコールン(オランダ)ドリス・ファンヘステル(ベルギー)など、実績確かなベテラン勢を獲得し、堅実に強化を図っている。

スーダル・クイックステップに2025年所属する選手の紹介ムービー。怪我でレーニングキャンプ欠席のエヴェネプールは最後に登場する。

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)

総合系チームとして進化し続けるドイツの雄。

昨年はエースのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)がブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を飾り、ジロ・デ・イタリアでもダニエル・マルティネス(コロンビア)が総合2位に入るなど、グランツールでの実績を着実に積み上げた。

今年のログリッチは5勝目がかかるブエルタではなく、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに出場予定。©Joris Knapen Jozza Cyclingpics

今季はこれまで手薄だったクラシック班の強化に取り組む。

フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド)オイエル・ラスカノ(スペイン)マキシム・ファンヒルス(ベルギー)ティム・ファンダイクミック・ファンダイクのファンダイク兄弟(オランダ)、そしてヤン・トラトニク(スロベニア)と強豪選手を一気に獲得。

ローレンス・ピシー(ニュージーランド)は、サム・ウェルスフォード(オーストラリア)ヨルディ・メーウス(ベルギー)とともにスプリントチームを牽引する。

山岳、丘陵、平坦、そして悪路とあらゆる地形で活躍できる選手が揃う、頼もしい布陣が完成した。

新加入フィッシャーブラックは丘陵とタイムトライアルで強さを発揮する23歳。

特にトラトニクはチームをまとめるロードキャプテンにうってつけのベテラン人材。グランツールではよき相棒として同郷のログリッチを助けてくれるだろう。

素晴らしいアシストでありながら自らの勝利を追い求める力も持ち、さらには若手の指南役としての役割も期待されている。

元チームメイトのログリッチと再合流したトラトニク。強力なルーラーであり、タイムトライアルも得意とする。

2025年は、昨年夏からタイトルスポンサーに加わったレッドブル社の資金力と他のスポーツで培ってきたノウハウが、チームの力を着実に押し上げるだろう。

スター選手と有望な若手選手をバランス良く獲得する手法は他スポーツのレッドブルチームでも見られるアプローチで、長期的な成功を見据えていることは間違いない。
加えてチームは、自転車競技におけるパフォーマンス向上のためのエンジニアリングの専門家ダン・ビガムを技術部門のトップに迎えるなど、選手だけでなくスタッフの補強も進めている。

選手としてもトップレベルの競技経験を持つビガムは、技術的アイデアとレースでの実践を繋ぐ方法を熟知している。

ロードレースには選手の身体能力だけでなく、機材や空力、トレーニング方法、戦術など多岐に渡る要素が関与しており、勝つためにはこうした要素を横断的に統括する科学的・技術的なアプローチが不可欠だ。

ビガムは既にスペシャライズド本社に足を運び、空力や構造など機材開発の専門家集団であるスペシャライズドのエンジニアチームとの連携を進めている。こうした専門家たちの働きは、選手個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の競争力を高める鍵となる。

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの2025年所属選手は29名。うち9名が新加入選手。

女子

FDJ・スエズ(フランス)

デミ・フォレリング(オランダ)移籍の報は、女子ロードレース界に衝撃を与えた。行先はFDJ・スエズ。フォレリングの到着にあわせて、同チームは今季からスペシャライズドサポートチームになる。

スペシャライズドとのパートナーシップ締結発表にあわせてチームカラーのTarmac SL8がお披露目された。

チームはスペシャライズド本社を訪問、自転車専用の風洞実験施設Win Tunnel(ウィントンネル)に入り、主力選手の機材チューニングも済ませている。

あらゆるレースで輝かしい結果を残しているフォレリングが後述するチーム SDワークス・プロタイムからFDJ・スエズに移籍したことで、女子ロードレースにおける勢力図が大きく変化することは間違いない。
フォレリングが2025年に目指すのは、昨年4秒届かなかったツール・ド・フランス・ファム総合優勝。それはフランス籍チームの悲願でもある。

落車のダメージもあり、昨年のツール・ド・フランス・ファムでは僅差で総合優勝を逃したフォレリング。今年は雪辱を誓う。©Tornanti cc

チームはフォレリングを中心としたチーム作りのため、大型補強を遂行。
現フランスチャンピオンであり世界屈指のクライマーであるジュリエット・ラブース(フランス)、逃げ巧者でもあるエリーズ・シャベイ(スイス)、トラック中長距離2種目の世界王者でありスプリントにも強いアリー・ウォラストン(ニュージーランド)など、スター選手を次々と獲得している。

チーム SDワークス・プロタイム(オランダ)

女子サイクリング界のトップに君臨するスーパーチーム。昨シーズンの勝利数は圧巻の69。うち50勝以上をロッテ・コペッキー(ベルギー)ロレーナ・ウィーベス(オランダ)、そしてフォレリングの3人で挙げている。

フォレリング擁するオランダを退け、チューリヒ世界選手権で勝利したコペッキー。©Tornanti cc

フォレリングは離脱するが、世界選手権2連覇のコペッキーと世界最速スプリンターにして欧州女王のウィーベスが引き続きチームをリードする。

そして、今年はこの強力なコンビにアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が加わる。2021年に引退、3年間監督としてチームカーのハンドルを握っていた女子ロードレース界の女王が、再びプロトンに戻ってくるのだ。

選手時代のファンデルブレッヘンはラ・フレーシュ・ワロンヌ・ファムで「ユイの坂」を7連覇し、世界女王にも2度輝いた最強女子選手のひとり。

その実力に監督の経験を通じて得たロードレースへの知見が加われば、チームにとって非常に大きな力となる。ファンデルブレッヘンは復帰発表後早々に今年のルワンダ世界選手権のコースを試走するなど、気合十分だ。

今年はチームカーをTarmac SL8に乗り換えるファンデルブレッヘン。

ファンデルブレッヘンの他には、スプリンターのスカイラー・シュナイダー(アメリカ)、クラシックレースに強いマルタ・ラフ(ポーランド)クライマーのミケイラ・ハーヴェイ(ニュージーランド)を獲得。

さらにマウンテンバイクで活躍してきたラウラ・スティッガー(オーストリア)もチームに加入する。
スティッガーは2018年にロードレースとマウンテンバイククロスカントリー・オリンピックの両方でジュニア世界選手権を勝った逸材で、今季もマウンテンバイクとロードレースの両方を走る予定だ。

マウンテンバイクで自転車競技をスタートしたシュテフィ・ヘベリン(スイス)は、チームに参加する今年からロードレースに集中する。
マウンテンバイククロスカントリー種目を走る選手はロードレースの山岳や丘陵コースでも強さを発揮し、ロードレースに転向するマウンテンバイクレーサーも多い。

フォレリングの退団に伴いチームは変革期を迎えており、様々な才能を持った選手を集めながら、新しい勝利の形を探っていると言えよう。

今季選手たちがまとうカラフルなジャージはスペシャライズド製。左胸の上に「Best Team 2024」の文字が輝く。

AGインシュランス・スーダル チーム(ベルギー)

2024年からワールドツアーチームに昇格した女子「ウルフパック」チーム。

昨年はエースのアシュリー・モールマン(南アフリカ)が怪我に苦しむ中、他メンバーが奮起。
ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー)のツール・ド・フランス・ファム区間1勝と山岳賞、サラ・ジガンテ(オーストラリア)のツール・ファム総合7位、キンバリー・ルコート(モーリシャス)のジロ・デ・イタリア・ウィメン最終ステージ勝利など、ビッグレースで好成績を残した。

ツール・ファムで山岳賞を獲得したヘキエーレ。Tarmac SL8も山岳賞仕様の赤玉模様に。©Tornanti cc

間もなく開幕する女子ツアー・ダウンアンダーが今シーズンの初戦だが、昨年総合優勝のジガンテは腸骨動脈の線維化症治療のための手術を行い、現在リハビリ中のため欠場。
今年はヘキエーレや新加入のアレクサンドラ・マンリー(オーストラリア)で勝利を目指す。

マンリーらオーストラリア出身の選手たちは、ナショナル選手権を経てツアー・ダウンアンダーに臨む。

新加入選手はマンリーを含む5人。
ロードレースと個人タイムトライアルのスロベニアチャンピオンであるウルシュカ・ジガートはクライミング能力に優れており、モールマンをサポートしながら自身の更なる成長を目指すとともに、若手選手との協働を今季の目標に挙げている。

エリート、U23、ジュニアの多層構成で(ちなみに男子チームのレッドブル・ボーラ・ハンスグローエも同様の構成を持つ)若手選手の長期的な育成と持続的なチーム運営を目指すAGインシュランスにとって、ジガートのような経験豊かな選手の働きは重要だ。

AGインシュランス・スーダル チームの2025年所属選手は19名。下段中央のジガート(スロベニア)、モールマン(アフリカ大陸)、ルコート(モーリシャス)はそれぞれチャンピオンジャージを着用する。

※選手や出場予定レース等の情報は2025年1月12日時点のものです。

Text:池田 綾


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