Red Rush Rising ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 プレビュー

Red Rush Rising ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 プレビュー

  • イベントレポート

間もなくスタートするグランツール最終戦、ブエルタ・ア・エスパーニャ2024のポイントをサクッとチェック。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024概要

© CAuldPhoto

夏の終わりを駆け抜ける、ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン一周の意)が始まる。

創設は1935年。グランツール(複数日を競うステージレースの中で最も格の高い3つのレース)として肩を並べるツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアが100回以上開催されているのに対して、ブエルタは2024年大会で79回目と若いレースだ。

当初は4月から5月に行われていたが、1995年に8月から9月にかけての開催に変更され、シーズン最後のグランツールとなった。

グランツールの「末っ子」であるブエルタ・ア・エスパーニャの特徴は、とにかく山、山、山。ブエルタはいつだってクライマーのためのレースなのだ。

今年のコースは特に極端で、全21ステージのうち平坦ステージはなんと1つだけ。

登りをこなせない重量級スプリンターの出番はない。さらに個人タイムトライアルの総距離はわずか34kmにとどまる。

ジロ・デ・イタリアが約72km、ツール・ド・フランスが約60kmの個人タイムトライアルを設定したことを考えれば、ブエルタがいかに山岳偏重のレースか、おわかりいただけるだろう。

ブエルタは8月17日(土)にポルトガルの首都リスボンから走り出し、最初の3日間をポルトガルで過ごした後、4日目からスペインに入り、2日間の休息日を挟んで、9月8日(日)にスペインの首都マドリードにフィニッシュする。総走行距離は3,265km。全21ステージの構成は以下の通り。

  • ・ 平坦ステージ:1
  • ・ 丘陵ステージ:5(うち山頂フィニッシュ2)
  • ・ 山岳ステージ:13(うち山頂フィニッシュ7)
  • ・ 個人タイムトライアル:2

200kmを超える長距離ステージは第14ステージのみで、短めの距離に登りを詰め込んだ日が多い。
このレースのお約束である激坂も多数登場予定だ。

また熱波の影響で気温40℃に達する地域を通過するため、暑さへの対処も重要となる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024コース。今年はピレネーではなく、シエラネバダやカンタブリアの山を走る。

ブエルタ・ア・エスパーニャのリーダージャージ(その日までのステージを通じて最速の選手=積算走行時間が最も短い選手に総合賞の証として与えられる)は「マイヨロホ(赤いジャージの意)」。

ジロ・デ・イタリアがバラ色、ツール・ド・フランスが黄色のレースならば、ブエルタは赤いレース。燃えるような、熱く、激しい戦いを見ることができるはずだ。

2022年大会ではレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が総合優勝を飾り、真紅のマイヨロホを勝ち取った。©CAuldPhoto

注目スペシャライズドライダー

ブエルタ・ア・エスパーニャにはスペシャライズドサポートチームであるスーダル・クイックステップとレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが出場する。

彼らはロードステージではTarmac SL8を、個人タイムトライアルステージではShiv TTを駆り3週間を戦う。

スーダル・クイックステップのエースはミケル・ランダ(スペイン)

ツール・ド・フランスでのエヴェネプールの総合3位と新人賞獲得の立役者であり、自身も総合5位に入った。今年12月に35歳になるベテランクライマーだが、今も進化を続けており、コンディションも好調。2014年のアルベルト・コンタドール以来となるスペイン人総合優勝を目指す準備はできている。

軽量でエアロなTarmac SL8と一流クライマーであるランダとのコンビネーションは強力。©CAuldPhoto

スペシャライズドライダーの相棒としてスペインの厳しい山岳に挑むTarmac SL8について詳しく> 

ツールではエヴェネプール(写真左から3番目)を支えたランダ(写真左)がブエルタでは自分のために走る。©CYCLINGIMAGES

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエは、落車負傷によりツール・ド・フランスを途中棄権したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)をエースに指名。

ログリッチは2019年から3年連続でブエルタ・ア・エスパーニャを制しており、このレースとは非常に相性が良い。怪我からどの程度回復しているかによるが、もし勝つことができれば、ロベルト・エラス(スペイン)が打ち立てた最多総合優勝記録(4回)に並ぶことになる。

ブエルタでレースに復帰するログリッチ(写真左)。彼の鋭い登坂スプリントは総合争いにおける大きな武器になるはず。©CYCLINGIMAGES

さらにチームはジロ・デ・イタリア総合2位のダニエル・マルティネス(コロンビア)を、ログリッチの副官兼サブエースとして投入する。ツールでは叶わなかった総合表彰台を目指す強力な布陣だ。

ジロで安定した強さを見せたマルティネスが、ログリッチとともにブエルタを戦う。©CAuldPhoto

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ブエルタ・ア・エスパーニャには、今年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを勝ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はいない。
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)も、エヴェネプールもいない。

前年覇者セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)、そしてツールでポガチャルの総合優勝に貢献したジョアン・アルメイダ(ポルトガル)とアダム・イェーツ(イギリス)は強力だが、先に開催された2つのグランツールに比べれば、ずっとオープンなレースになるだろう。

ステージハンターに嬉しい逃げ向きのステージも、たくさん用意されている。
それはつまり、とても面白いレースになるということだ。

※コース、出場選手等の情報は2024年8月13日時点のものです。


【筆者紹介】
文章:池田 綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦と自転車旅を愛するサイクリングライター。名前の通りジュリアン・アラフィリップの大ファン。

池田 綾さんの記事はこちらから>


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