「TIME=膝に優しいペダル」──ロードバイクに長く乗っている方なら、一度はこの言葉を耳にしたことがあるはずです。実際、プロ・アマ問わず「膝の痛みに悩んでTIMEに行き着いた」「他のペダルに変えたら関節に違和感が出てTIMEに戻した」というライダーは後を絶ちません。
しかし、なぜTIMEだけがそう呼ばれるのか、そのメカニズムをご存知でしょうか? 今回はTIMEペダルの核心である「バイオポジション設計」、特許技術「ICLIC(アイクリック)」の内部構造、そして最新「XPRO」シリーズの進化点まで、ショップ目線で徹底的に掘り下げます。
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4大メジャーペダルメーカーに関して深堀りしていくトップバッターはTIMEです。
2026年の自転車ロードレースのトップカテゴリーであるワールドチーム18チームのうち、TIMEペダル使用チームは1チームのみです。そういう点では超マイナーブランドです。しかしそれは必ずしも性能的に劣っているというわけではなく、資本力の問題が大きいです。
しかし、歴史的にはLOOK/TIMEというのは二大巨頭でした。
ビンディングペダル(クリップレスペダル)の歴史は、1980年代半ばにLOOKがスキー用ビンディング技術を応用したことで始まりました。従来の「トークリップ&ストラップ」から解放されたペダルは革命的でしたが、当時の初期型ペダルには大きな問題がありました。「足を完全に一点でロックしてしまうため、プロ選手たちの膝関節に激痛や故障が多発した」のです。
この問題を解決すべく立ち上がったのが、TIMEでした。
「機材に合わせて人間が我慢するのではなく、機材が人間の関節に寄り添うべき」──。 この創業以来35年以上変わらない基本哲学が、今なお「膝に優しいペダル」と呼ばれる所以です。


Greg LemondもMiguel Indurainも足元は常にTIMEペダルでした。
多くのペダルが「バイクへのパワー伝達」を最優先に設計されているのに対し、TIMEは創業当初から「ペダル側が人間の関節運動に寄り添うべき」というバイオメカニクス(生体力学)思想を貫いています。その中核をなすのが独自のフローティング機構です。
他社ペダル(シマノやLOOKなど)のフローティングは、ペダル軸の中心を基準にシューズが扇状に回転する「角度フロート」が基本です。
しかし、人間の膝関節はクランクが回転する際、単純な回転運動をしているわけではありません。踏み込み(1時〜3時)から引き足(6時〜9時)にかけて、大腿骨に対して脛骨がわずかに回旋し、足裏の位置もミリ単位で内外にシフトしようとします。
TIMEは角度(±5度)だけでなく、左右への平行移動(ラテラルフロート:約2.5mm幅)を許容します。足裏が左右にスライドできるため、ペダリング軌道で発生する関節のねじれストレスをペダル側が逃がしてくれます。これが、腸脛靭帯炎(ランナー膝)や膝蓋骨周辺の痛みに劇的な効果を発揮する最大の理由です。
TIMEのフロートは、単に「スカスカ・ツルツル」と無抵抗に動くわけではありません。カーボンスプリングの弾性によって「常に自然な中心(ニュートラル位置)に戻ろうとする復元力」が働いています。
この絶妙な戻りバネのチューニングがあるからこそ、「氷の上を滑るように自由なのに、しっかり踏める」という独特のフィーリングが生まれます。
TIMEのICLICクリートは左右非対称形状になっており、「右用クリートを左足に、左用クリートを右足に」付け替えることで、ペダル軸と足裏の中心距離(Qファクター)を 51.7mm または 54.3mm(差:2.6mm) に変更できます。スペーサーを噛ませることなく、骨盤の幅やペダリングの癖に合わせてスタンス幅を簡単に最適化できる優れた設計です。
TIMEを語る上で欠かせないもう一つの革命が、特許取得のステップイン機構「ICLIC」です。
一般的なロードペダル(シマノやLOOK)は、後部の金属スプリングやカーボンブレードを、シューズ底のクリートで「グッ」と力任せに押し広げてパチンと嵌め込みます。そのため、固定力を強めるとステップインも重くなります。
対してTIMEのICLICは、「ネズミ捕りのトラップ」と同じ構造です。
ライダー側がバネを押し広げるエネルギーを必要としないため、体重の軽いライダーや女性でもペダルを真下に踏み下ろす必要がありません。特に「激坂の途中で止まってしまい、クリートを嵌め直して再発進するシチュエーション」や、疲労困憊したロングライド終盤の信号スタートにおいて、ミスなく一瞬でキャッチできる安心感は圧倒的です。
前世代の「XPRESSO(エクスプレッソ)」から現行の「XPRO(エックスプロ)」へとフルモデルチェンジしたことで、TIMEペダルは信頼性と空力性能を大きく引き上げました。
XPROの接触面積は725mm²。シマノ DURA-ACE(約600mm²)やLOOK Keo Blade(705mm²)をも凌ぐクラストップレベルの広さです。
ペダルとシューズ底が広い面でコンタクトするため、パワー伝達効率が高まるだけでなく、足裏の特定箇所に圧力が集中する「ホットスポット(足裏のしびれ・局所痛)」を強力に防ぎます。
旧XPRESSO最大の弱点は、むき出しになった下面のカーボンブレードでした。コーナリング時にペダルを路面にヒットさせたり、跳ね石が当たったりしてブレードを破損するトラブルが稀に見られました。
現行XPROでは、ペダル底面にフルカーボン製のエアロカバー(フェアリング)を装備。下面の気流を整えてエアロダイナミクスを向上させると同時に、心臓部であるカーボンブレードを外部の衝撃から強固に守る構造へと進化しています。
ペダル軸の中心からシューズソールまでの距離(スタックハイト)は13.5mmと極めて薄型。足裏の直下に回転軸を感じられるため、ペダリングの引き足・送り出しが滑らかになり、無駄なロスを極限まで削ぎ落としています。
メリット尽くしに見えるTIMEですが、導入にあたって知っておくべき「運用のコツ」や「注意点」も存在します。
| モデル | シャフト素材 | ベアリング | カタログ重量(ペア) | 特徴・おすすめライダー |
| XPRO 10 | 中空スチール | スチール | 226g | 最もおすすめの主力機。 剛性と耐久性に優れ、日常使いからレースまでカバーする高コスパモデル。 |
| XPRO 12 | チタン | スチール | 188g | チタン軸を採用しアンダー190gを達成。軽快な回転感と高い剛性を両立した実戦派レーサー向け。 |
| XPRO 12 SL | 中空チタン | セラミック | 176g | 究極の超軽量フラッグシップ。ヒルクライム決戦用や、バイクの限界軽量化を狙うライダーへ。 |
※ TIMEはシマノ・LOOKよりもクリートが重いので、ペダル重量だけを比較して軽量化になる!というわけではありません。
1990年代に高校時代のアイドルだったインデュラインがTIMEペダルユーザーだったのと、当時一番の練習仲間であった鈴木真理選手がプロチームに入るまで一貫してTIMEペダルを使っていた事により、TIMEペダルのイメージが出来上がりました。
強い人はTIMEを使っている。TIMEを使えば強くなれる!そう思っていました。
と言っても学生時代まではなぜかTIME以外のペダルを使用することが多かったです。
2006年に社会人レーサーとして再開した時にTIMEペダルを使い始め、それ以降TIMEペダル一筋でした。ツールドおきなわも2019年までの6回は全部TIMEペダルで勝っていました。
それでもなぜ近年LOOKやシマノペダルに浮気しているのか?
TIMEは動きのクセを許容・吸収してくれる優しさがあるけど、本来的にはクセや無駄な動きは排除した方がきれいなペダリングになるのではないかと思い、許容範囲の狭いLOOKなどでペダリングを矯正しようという意図があり、ここ数年TIMEを離れていました。
なぜ最近TIMEに戻ったのか?
一番はダンシングのしやすさ。シッティングに比べて非常にダイナミック(動的)なダンシング時に、TIMEペダルの踏みやすさが感じられます。動くのだけどセンタリング機能が非常に絶妙です。これは昔のTIMEよりも最近のiClicになってさらに良くなりました。
またLOOKやシマノペダルを使ってトレーニングして、またTIMEに戻ってきたことも決して無駄ではないと思ってます。ペダリング矯正ー開放を行き来することにより理想のペダリングに近づいていくのではないかと思っています。
※2026年9月時点でまたTIMEペダルユーザーに戻りましたが、またいつ他のペダルを使うかわかりません。
TIMEは単なるペダルではなく、「身体のバイオメカニクスを突き詰めたエルゴノミックパーツ」です。現在お使いのペダルで少しでも膝まわりにストレスを感じているなら、試す価値は間違いなくあります。
店頭では実物サンプルのご確認や、シューズへのクリート取り付け角度のフィッティングも行っております。お気軽にご相談ください!
(次回は、ビンディングペダルのパイオニアにしてロードレースの王道「LOOK」を深掘りします。お楽しみに!)