求めるのは究極の“人馬一体感”トライアスロンコーチ、中村美穂さんが競技復帰を前にRetül Fitでバイクを最適化!

  • 公開:2025.05.30
  • 更新:2025.05.30

スペシャライズドが提供するバイクフィッティングサービス「Retül Fit(リトゥールフィット)」の大きな特徴は、専門知識を備えたフィッターが、自身の経験に加えて独自のデジタル解析システム「Retül 3Dモーションキャプチャーシステム」を用いて、定量的な測定を行う点にある。

実際にバイクを漕いでいる際のポジションをリアルタイムで測定し、フィッターの経験や勘に頼らず、具体的な数値に基づいて微調整を行い、最高のフィットを実現するのである。

自転車の動力源は乗り手である。そのエネルギーを維持し、効率よく生かすには、正しいポジションで乗ることが必要不可欠だ。そして、その重要性は競技でも、週末のレジャーでも、日常の移動でも基本的に変わりはない。

スペシャライズド契約ライダーでもあるトライアスロンコーチ、中村美穂さん(以下MihoCさん)は約5年ぶりにRetül Fitを受けるという。
「約2年前に膝の半月板断裂の再生医療手術を受けたんです。まだ完全には治ってなくて、徐々に負荷を上げている感じなんですが、やっぱり従来のポジションでは合わないところがあって。
あと、いま目標にしている「2025世界トライアスロン横浜大会」に向け、クランク長を170mmから167.5mmに変更したことや、筋力トレーニングによって体のバランスが変化していることもあって、改めてRetül Fitで数値的なチェックをしてみたいと思いました」

MihoCさんのRetül Fitを担当するのは、スペシャライズド新宿の副店長、生方麻希さん。フィッターはフィッティングや機材についての豊かな知識に加え、高いコミュニケーションスキルも求められる。Retül Fitは、依頼者の目的や練習量、怪我の履歴、ライドにおける悩みや要望などを詳細にインタビューするところから始まるからだ。

Retül Fitを受ける人
中村美穂さん(トライアスロンコーチ)

4歳から水泳を始め、大学卒業まで競泳競技の選手として活躍。引退後に病気を経験したことで「スポーツが人生を豊かにする」と得心し、栄養学、心理学、機能解剖学などを学び、トライアスリート兼トライアスロンコーチとして活動する。2018年よりスペシャライズドの契約ライダー。愛称はMihoC(ミホシー=美穂コーチの略)。

MihoCさんの詳しいプロフィールはこちら


Retül Fitを行う人
生方麻希さん(スペシャライズド新宿 副店長 )

スペシャライズド新宿店のオープニング時から在籍するベテラン。約9年前に同店でRetul Fitのサービスを開始したときからフィッターを務める。プライベートでは、月1の頻度でスタッフとサイクリングに出かけたり、親子でシクロクロスのイベントに参加するなど、気ままな自転車ライフを楽しんでいる。

Retül Fitのメニュー・料金はこちら


まずはライダーの志向性やバックボーンなどを聞き取り

スペシャライズド新宿の店内にあるRetül Fit専用ルーム。まずは生方さんがフィッティングに必要な情報をMihoCさんにヒアリング。普段の生活スタイルや自転車の主な用途、練習量、他に行っているスポーツ、競技経験、怪我の履歴や経過について、ライド中に悩んでいること等を丁寧に聞き取っていく。

「最近、怪我しがちなハムストリングへの負担を減らし、臀部や大腿四頭筋を有効に使って出力を出したい。股関節と背中の柔軟性を活かしつつ、膝を曲げすぎないポジション」というのが、今回のRetül FitにおけるMihoCさんの要望である。

約20ヵ所にも及ぶ計測で身体の「いま」を知る

インタビュー後はアセスメント(身体測定)を実施。生方さんの指示のもと、様々な姿勢で身体の柔軟性や関節の可動域、体幹バランスなど、約20項目に及ぶ計測を行う。
例えば、ここで柔軟性があまり高くないようであれば、あらかじめ一定以上は前傾させないようにするなどの制約を設けたうえで、ベストなポジションを探っていくことになる。フィジカルの強弱に関わらず、あくまでライダーファーストでバイクを調整するというのがRetül Fitの基本理念なのだ。

ちなみにMihoCさんは身体能力が高く、ヨガなどで身体のケアも十分に行っているため、すべての項目で「制約なし」だった。

こちらは座骨結節幅、つまりお尻の骨の幅の計測を行っているところ。着座するだけで計測が可能な「Retül DSD」というデバイスを使って行う。座骨結節幅のデータは適切なサドルを選ぶ際に活かされる。

こちらは「Retül DFD」というデバイスを使い、足裏のアーチの圧力を計測しているところ。数百ヵ所のデータポイントをもとにマップが作成され、最適なシューズやインソールを選ぶ際に活かされる。

Retül Fitは愛用のバイクでもフィッティングすることが可能

通常、Retül fitではサイズ調整用の専用バイク「Müve SL(ムーヴ エスエル)」を用いるが、
今回のように希望があれば、普段使用しているバイクを使って行うことも可能。Müve SLを使用したフィットでは、改めて診断結果を愛車に反映する必要があるが、こちらは大掛かりなパーツ交換がなければ、フィットとセッティングを同時に終えられるのがメリット。

フィッティング作業を行う前に、「ZIN」と呼ばれる専用の三次元測定機や水平器などを使用し、バイクの現在の各部寸法を計測する。

Retül Fitから生まれた最新シューズ

ウェア&シューズも、いつも使っているものを着用してフィッティングを行う。MihoCさんが着用するのは今年3月に発売された「S-Works Ares 2」。このシューズは、Retül Fitで測定した10万以上の足のデータから得た知見をもとにラストを設計。それまでのシューズと比較し、前足部の圧迫を44%減らし、これまでにない一体感を実現している。

最新のデジタル計測機器と専用アプリでライドを解析

Retül 3Dモーションキャプチャーのマーカーを体の各部に取り付ける。これによりペダリング中の体の動きをリアルタイムで測定し、専用アプリで数値化・分析することができる。先ごろRetül Fitの専用アプリシステムが一新され、ロードバイクやTTバイク、同じトライアスロンのフィットでもバイクによってディメンションの違いを考慮した理論値が算出できるように。さらに進化したパーソナライズが可能になった。

マーカーを装着した状態でペダルを漕ぐと、足首や肘、肩の角度、股関節や膝の曲がり具合、ペダルの軌跡など、あらゆる情報が数値化され、アプリ画面でモニターされる。ここからは画面の数値を基準にしながら、フィッターとライダーがコミュニケーションを取りながら、バイクの調整を行い、理想のポジションを探っていく。

インタビューやアセスメントをもとに算出された理論値のレンジ(範囲)内に収まるよう、バイク各部の調整を行っていく。ただし、MihoCさんのように経験豊かで鋭敏な感覚をもったライダーの場合では、実際のフィーリングも重要な情報となります。

Retül Fitの魅力は「バイクが体の一部になること」

3時間におよぶRetül Fitを終えたMihoCさんに、その魅力について聞いた。
「ロードバイクやトライアスロンのような機材スポーツというものは、機材に投資するほどスピードアップするという面があります。
ただ、私はどんな機材であっても自分の体の一部のように扱えなければ意味がないと思っているんです。膝の関節だって1㎜ズレてしまったらまともに曲げ伸ばしできなくなりますよね。バイクのフィッティングも本来はそれくらい繊細なものだと思います。
経験豊かなライダーであれば、ある程度は自分の感覚を頼りにポジションを決
めることはできますが、そこにRetül Fiの豊富なデータが加わることで、より高いレベルでフィッティングの『最適化』を達成することができます」

膝の手術などを経て、5月開催の「2025世界トライアスロン横浜大会」で数年ぶりに競技復帰予定のMihoCさん。トライアスロン競技における正しいフィッティングの重要性について、次のように語ってくれた。

「トライアスロンというのは、限られた体力をスイム、バイク、ランという三種目で順に削りながらゴールを目指す競技です。だからバイクで体力を100%出し切ることはないんですね。そうした条件のなかで、理想的なバイクのポジションを分かりやすく表現するなら『加速よりも減速しないためのポジション』ということになります。TTバイクは基本的に前傾姿勢ですが、
仮に誤ったフィッティングで股関節の可動域を超える深い前傾姿勢でペダルを漕ぎ続けるとランのパフォーマンスを低下させる可能性があります。今回のRetül Fitでも、そうした要件を織り込んだうえでバイクを調整してもらいました」

MihoCさんはアスリートとして、さらなるパフォーマンスアップのためにRetül Fitを受けたが、ファンライドをメインに楽しむ一般のライダーにとってもメリットがあると語る。

「初心者の方は、最適なポジションを見つけようにも基準がなくて苦労されるはずです。RetülFitは高精度な計測に基づく絶対的な『数値』で可視化されるため、ポジションを最適化できる
ことに加えて、その後のバイクライフにも継続的にメリットがあるはずです。今より筋力がついたり、体型や体重、柔軟性の変化、怪我などによって理想のフィッティングは変わりますが、そのときに基準となる数値があれば、最適化への手間や時間は大幅に短縮されます」バイクを自身の体に最適化させることは、眼鏡をチューニングするのに似ているとMihoCさん。
いくら高価なフレームを奢っても度数の合っていない眼鏡など無用の長物である。ノーズパッド調整も然り、テンプル調整もまた然りである。そして目の状態に応じて継続的にチューニングを行う必要があるのもバイクと同じ。
Retül Fitは決して特殊なものではなく、愛用のバイクが「あなたのバイク」になるための、ごくスタンダードな行為なのである。
(Text&photo 佐藤旅宇)

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