“北”の地獄 ~北海道エクスペリエンスセンターから函館までの300km~ 【前編】

  • 公開:2023.11.17
  • 更新:2024.07.3

これは、最長距離の自己ベスト更新に挑んだスペシャライズドスタッフたちの物語です。
Roubaix SL8(ルーベ SL8)を携え、彼らが選んだ挑戦の場は初冬の北海道。その距離300km。


雨、暗闇、空腹、睡眠不足、集団の分裂。それでも仲間と函館を目指す彼らが見た、超ロングライドの魅力とは?
前後編でお届けいたします。

「“北”の地獄」開催の経緯

2023年3月にオープンしたスペシャライズド北海道エクスペリエンスセンター
オープンから半年ちょっとで多くのお客様へ北海道という最高のライド環境を生かした体験を提供してきた。しかし、場所は北の土地、北海道。冬場の営業では、なかなか屋外でのライド体験を提供できない。

北海道のさらなる魅力やチャレンジングなライド体験を来年以降提供していくため、夏季営業の締めくくりとして北海道エクスペリエンスセンターのある北広島市から函館まで約300kmを1日で走破するというクレイジーな「“北”の地獄」が計画された。 

今回の企画は、スペシャライズド・ジャパンのスタッフからは、北海道エクスペリエンスセンター店長の浅尾、副店長の曽我部、マーケティングの板垣が参加。さらに、スペシャライズド北海道エクスペリエンスセンターがテナントとして入る施設、「北海道ボールパークFビレッジ」の管理運営を行なっている株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの阿部さん、そして、ニセコ中心にバイクレンタルや販売を手がけるRhythm Japanの松橋さんが参加した。 

それぞれの自転車歴やレース経験は様々。多様なメンバーでの“北”の地獄の挑戦となった。 

浅尾: ロードバイク歴は15年。20歳ごろまでロードレースに打ち込んで、JBCFのE1クラスで走る。最近は月の走行距離が平均100-200km程度。主に通勤でTurboモデルのVado SLを愛用している。
曽我部: ロードバイク歴は12年。同じくJBCFのE1クラスで走っていたライダー。UCIコンチネンタルロードレースチームのスタッフを5年間経験するなどロードレース関係で様々な経験の持ち主。 
板垣: ロードバイク歴は約10年。レースに出場し始めたのはスペシャライズドに入社してからで、Tarmac SL8の発表に合わせて2023年のツール・ド・おきなわ市民200kmに出場することを決めて練習を積んできた。 
阿部: 昨年Vado SLを購入し、今年Cruxも購入して本格的にスポーツバイクを乗り始めた。最長走行距離は70km。
松橋: 自転車歴は約10年。オーストラリアに住んでいたときにクリテリウムなどのアマチュアレースに参戦。最近は道内で行われるレースで3度優勝やグラベルレースのグラインデューロでも年代別で3位に入るなどメンバー1の走力の持ち主。 

300km完走へ向かって 

“北“の地獄のスタートはその名に相応しいスタートとなった。午前0時に北海道エクスペリエンスセンターにメンバーが集合。それぞれ仮眠をしてから集合しているが、夜と言うべきか朝というべきか混乱しながら、バイクや用品の準備を進めた。 

今回5名が使用したバイクは、9月に発売されたばかりのRoubaix SL8(ルーベ SL8)。

エンデュランスロードバイクで、長距離を快適に走りきるためのテクノロジーが散りばめられている。特に従来のロードバイクの見た目はそのまま、ステム下に密かに装備されている20mmトラベルのサスペンション、Future Shockは路面からの振動や凹凸からライダーを切り離し、今までのロードバイクでは考えられないスムーズな乗り味を実現する。
また、リア周りはシートポストのしなりを利用したAfter Shockを採用し、約20mm円弧方向に振動を吸収する。

そんな今回の300kmライドにピッタリのRoubaix SL8の準備を進めた。準備の中の会話では、松橋さん以外の4名は初めての300kmライドで不安と楽しみが入り混じる。もちろん、函館までの300km走り切るのもチャレンジだが、ただ走り切るだけではない、5人それぞれが自分自身の「勝利」を設定した。 

〜〜〜

浅尾:「地獄を乗り越えて、300kmを走り切る」 

曽我部:「家族のところへ笑顔で無事に帰る」 

板垣:「300kmをとにかく楽しんで走る」 

松橋:「誰よりも楽しんで走り切る」 

阿部:「安全に300kmを走り切る」 

〜〜〜

5人の共通目標の函館までたどり着くことに加えて、この個人目標を心に刻み、北海道エクスペリエンスセンターをあとにした。 

地獄の始まり 

前後ライトを灯し、県道と国道を中心に、函館へ向けて午前1時30分頃スタート
前日の予報では、前日の23時ごろには雨が止んでいるはずだったが、スタート直後からパラパラと雨音がウェアに響く。 

気になる雨の量ではなかったが、夜の間に降っていた雨で路面は濡れていた。
タイヤから巻き上げられる水によって、ウェアはあっという間に濡れ、タイツはあっという間に浸水
HyperViz SL Pro Wind Jacket(以下HyperViz Wind Jacket)や表面が撥水素材のPrime Alpha Jacket(以下Alpha Jacket)を着ていた上半身は濡れずにすみ、この時期の北海道らしくない比較的暖かい11度の気温とAlpha Jacketにも助けられてなんとか凍えることはなく、快調に走り出した。 

信号がなく、車もほとんど来ない県道であっという間にスピードに乗り、踏みすぎることがないように淡々としたペースで進む。関東からやってきた板垣がスタートしてすぐに気がついたのは、北海道の道のあれ具合。雪かきなどによって路面の所々に亀裂が入り、トラックも多く通行するため轍も多い。街灯がない道が続くため、頼ることができるのはメンバーのライトと走行ライン。暗闇の中での走行ではいかに車に気がついてもらえるかが重要になる。もちろん前後ライトを装備していたが、HyperVizの視認性の高さには助けられた。 

夜に濡れた悪路の走行は、あとからメンバーも口を揃えて「スタートした後から日の出までが一番神経を使って辛かった」と語った。まさに、300kmライドの地獄の始まりに相応しい環境でのスタートとなった。 

変化する気温と環境

50kmほど走行して到着した苫小牧。

やっと雨が止んだが、スタートして約2時間しか経過していない中、ここまで暗闇と路面からの水飛沫に体力の消耗は始まっていた。本日2回目のコンビニ休憩を苫小牧で挟む。メンバーそれぞれおにぎりやパンなどを購入して、補給する。
時間としては午前4時前頃となり、スタートよりも冷え込んできた。コンビニ休憩で体温が下がると一層寒さが体に刺さる。補給を足早に済ませて、苫小牧の街をあとにした。

苫小牧を出ると国道36号は海沿いを走り、この辺りは前日雨が降っていなかったのか路面が濡れていない。水の巻き上げが体に当たらないだけでライド中のストレスレベルは大きく下がり、路面がドライになることで、暗闇でも神経を使うことが少なくなる。走りやすくなった。このまま、36号線を走ってメンバーは室蘭を目指す。 

36号線は海沿いを走る非常に楽しい道で、途中から勝手にメンバーでローテーションが始まっていた。松橋さん、曽我部、そして絶対に前を引かないだろうと思っていた浅尾の順で先頭を交代していく。

「本当に300km走るのか?走れるのか?」という疑問が生まれるほど、快調に進む。板垣がそのあと先頭に出て、集団を引き始めた。快調に進むグループを見て、少しスピードを上げて引き始めた板垣。

その結果、次の信号待ちで、阿部さんと浅尾から「このペースはやばい!」と膝と表情が笑いながらストップがかかる。この時点で300kmライドらしからぬ、平均時速が30kmを超えていたため、メンバーのスピードは一旦落ち着きを取り戻す。 

この辺りで少しずつ空が明るくなり始める。
ハイペースで温まっていた体に、太陽の光が差し、一気に体の芯まで温まる。日の光がなく10度前後の気温だと、Alpha JacketにHyperViz Wind Jacketが必要だった。
特に、Polartec® Alpha®を内側に採用するAlpha Jacketは、蒸れてしまうことはなく、10度前後でも余裕を持った保温・断熱性能で今回のライドを助けてくれた。ただ、日が登った10度くらいの気温では、Alpha Jacketは脱いだ方が良さそうだった。一旦歩道に入って、ウェアを脱ぎサポートカーへ渡して温度調整を行った。

冬のライドは朝、昼間、夜の温度差も激しく、体が温まったと思ったら、温まり過ぎて汗をかいてしまう。風を受けて冷えたり、運動強度が上がって熱くなったり、非常に体温調節が難しい。冬のライドにはレイヤリングが重要だということが身をもって再認識した。

日の出したところで、ちょうど約100km地点の登別へ到着

ここでもコンビニ休憩を挟む。この辺りですでに普段の月間走行距離に達していた浅尾は疲労困憊。それに対して、阿部さんも既に自己最長距離を更新していたが、まだまだ走ることができそうな余裕を感じさせた。 

100kmから200kmの壁 

登別を出発し、室蘭を通過。やはり街に入ると車と信号が多くなり、今までのペースからは少し落ちる。室蘭を過ぎると国道37号線に入り、海沿いからほんの少し内陸に入ったところを進む。ラッキーだったのは風がそこまで吹いていなかったこと。海沿いで強い向かい風だったら300kmのチャレンジはさらに長く感じていたことだろう。

この辺りになると明るくなって車も多くなったこともあり、集団走行でも縦一列に整列して進む。言葉を交わすことも少なくなり、淡々とペダルを踏んで目的地を目指す。少し内陸を進むこの道では少しアップダウンも出てきて、100kmを超えた足へボディーブローのように疲労を重ねていく。

豊浦町で5回目のコンビニ休憩を取り、ここで約150km地点

もう半分来たとも言えるし、あと半分もあるという複雑な気持ちを噛み締める。流石に150km走っているということもあって、お腹も空く。阿部さんと浅尾はここでお弁当を食べて補給。補給時は自然とメンバーたちの笑顔も溢れる。この時は、メンバーそれぞれ食べたいものを補給していたが、300kmチャレンジが終わってから胃腸の疲れを感じた。ロングライドは補給食選びも大切だと終了後に気付かされた。 

曽我部はここでも疲れは見せていたが、まだ行けそうな感じ。松橋さんはさすがにまだまだ元気で、集団先頭を一定のペースで引いてくれていた。海沿いなので、全く風がないとういうわけではなく、先頭で松橋さんが長い時間、ペースを刻んで引いてくれることで、”北”の地獄の完走を大きく近づけた。

ソロライドでは、身体的にも精神的にも無理と思えるようなチャレンジでも、グループライドであれば達成できるというグループライドの真骨頂を噛み締める。とはいえ、長い道のりなかで、走力の違いによってグループが分断されることがあるのがロングライドでの難しさとも言える。 

豊浦を出ると標高約300mまでアップする礼文華峠がはじまり、ここでメンバーが松橋さん、板垣、曽我部の3名と浅尾と阿部さんという2つのグループに分かれてしまう。

前を走る3人は登り終えて、下りで2人を待とうとスピードを少し落としたが、姿が見えない。次の休憩場所として設定していた長万部(おしゃまんべ)までは2つのグループで進むことになった。

峠を越えるとこれぞ北海道の道だなと感じさせる、先が見通せてしまう約8kmの直線踏んでも踏んでも進んでいるような感じがしない、不思議な感覚を味わいながら、向かい風の中を進む。松橋さん先頭に、曽我部、板垣と続く集団で進んだが、松橋さんの走力の高さを感じさせる走りを見せつけられた。曽我部と板垣ももうすぐ200kmに到達するのに流石の走りだなと驚くばかり。

松橋さんのサポートにも助けられて昼食ポイントのイカが丸ごと入った「浜ちゃんぽん」で有名なお店に到着。先着の3人が阿部さんと浅尾を待っていると、予想に反して阿部さんだけが先に到着。スポーツバイクを初めて2 年目、ロードバイクを初めて1年目とは思えない走りでただただ驚くメンバーだった。その後、浅尾が顔を白くして、限界ギリギリという状態で到着
まさに地獄を味わっていた浅尾はもう足が動かない。 

「もうリタイアする!」とメンバーに打ち明けるが、そんなことはさせるわけのないメンバーたち。「とりあえず昼食を食べよう!」と半ば強引に説得していうことでお店に入り、名物の浜ちゃんぽんを平らげる。浅尾の顔色は良くなり、昼食を食べたことで復活したよう。 

今度は、2グループに分かれることなく、1つのグループで走り出した。長万部で約200km。あと、100kmという希望を感じながらも、ロングライドの経験豊富な先輩松橋さんは冷静だった。ここからが本当のロングライドの始まり、地獄の始まりだと。 

▼ 後編はこちらから

▼ 挑戦者4名へのインタビュー! こちらから
Roubaix SL8の魅力を各挑戦者の実感とともに確認してください。

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