S-Worksじゃなくても“本物のSL9”? FACT 10rを徹底解説

  • 公開:2026.08.28
  • 更新:2026.08.28

こんにちは、スペシャライズド熊本です。先日発表されたTarmac SL9 FACT 10rモデル

すでにブログでもラインナップをご紹介しましたが、今回はもう少し踏み込んで、

「S-Works Tarmac SL9と何が違うの?」

というところを掘り下げてみたいと思います。今回追加されたのは、

S-Level
Expert
Comp

の3グレード。

これによってTarmac SL9は、一気に選択肢が広がりました。特に注目したいのが、全モデルに採用されるFACT 10rカーボンフレームです。

S-WorksはFACT 12r。それに対してS-Level、Expert、CompはFACT 10r。数字だけを見ると、「やっぱりS-Worksのほうが圧倒的に性能がいいんじゃない?」と思われるかもしれません。

ところが今回のSL9、詳しく見ていくとなかなか面白いんです。

そもそもTarmac SL9は何を目指したバイクなのか?

まずはここから。

Tarmac SL9を理解するうえで重要なのが、「Time to Finish(フィニッシュまでの時間)」という考え方です。

ロードバイクの性能を語るとき、「何g軽くなった」「何ワット空気抵抗が減った」「剛性が何%上がった」といった数字に目が行きがちです。もちろん、それらは非常に重要です。しかし、レースで最終的に重要なのは何でしょう?

答えはシンプル。

誰が一番早くゴールしたか。

そこでSL9では、空力や重量といったバイク単体の性能だけを見るのではなく、

空力
重量
転がり抵抗
路面状況
環境
ライダーのパワー
疲労
ポジション

などを含め、実際のレース環境でどれだけ速くゴールできるかを考えて開発されています。つまり、

「一番軽いバイクを作る」でも「一番エアロなバイクを作る」でもなく、「一番早くゴールできるバイクを作る」。

これがTarmac SL9の考え方です。

SL9は見た目以上に変わっています

SL8からSL9になり、パッと見ただけでは「そこまで大きく変わっていない?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし各部を見ると、かなり細かく手が入っています。まず特徴的なのが、

【Speed Sniffer】

ヘッドチューブはさらにスリムになり、正面投影面積を削減。

【Flow Fork】

フォークブレードはSL8より存在感のある形状になっています。単純にフォークを薄くするのではなく、気流をコントロールするために特徴的なツイスト形状が採用されています。

【Dropped Downtube】

ダウンチューブ位置を下げることで、フロントホイールからダウンチューブへ流れる空気をよりスムーズに処理。そしてリア側には、

【Win Fin】

ボトルを1本にして逃げるような実際のレースシチュエーションまで考慮し、リア周辺の気流を整えています。

SL9は一部分だけをエアロにしたのではなく、フロントからリアまで、バイク全体で空気をどう流すかという考え方で設計されています。

そして今回登場したFACT 10r

ここからが本題です。

S-Works Tarmac SL9に使用されているのは、FACT 12rカーボン。

今回登場したS-Level、Expert、Compは、FACT 10rカーボン。

ここだけを見ると、単純なグレードダウンに感じます。

ですが、スペシャライズドが公表しているFACT 10rと12rの違いを見ると非常に興味深いです。

FACT 10rフレームは、

空力性能
剛性
コンプライアンス

について、FACT 12rと同等になるよう設計されています。

違うのは主に重量です。

気になる重量差は?

S-Works Tarmac SL9のFACT 12rフレームは、≪687g≫

それに対してFACT 10rフレームは、≪822g≫

その差は、約135g。

もちろんロードバイクにおいて135gは決して小さな数字ではありません。特にヒルクライムやレースで1秒を争うライダーにとって、135g軽いというのは大きなメリットです。

ですが、ここで考えていただきたいのが、「135g重くなった代わりに、何を失ったのか?」ということ。

今回のFACT 10rでは、SL9のフレーム形状そのものが別物になっているわけではありません。

【Speed Sniffer】、【Flow Fork】、【Dropped Downtube】、【Win Fin】といったSL9のエアロ思想も受け継がれています。さらに剛性やコンプライアンスについても、S-Worksと同等を目標に設計されています。つまり、

SL9というバイクの核となる部分は、FACT 10rでもしっかり残されている。

ここが今回の10rモデルで一番注目していただきたいポイントだと思います。

フォークはS-Worksと同じFACT 12r

10rモデルだからといって、すべてが10rになったわけではありません。フォークにはS-Worksと同じFACT 12rカーボンを採用しております。

これは個人的にもかなり注目したポイントです。

以前、高野がS-Works Tarmac SL9に試乗した際のレビューにも書いていますが、SL8との違いとして特に感じたのがステアリング周辺のカッチリとした剛性感でした。バイクを左右に振った際にフロント周辺がしっかり付いてくる感覚があり、下りの高速域でも非常に安心感がありました。

そのSL9のフロント周りを構成する重要なパーツであるフォークに、10rモデルでもS-Worksと同じFACT 12rを採用しています。

フレームだけを見て、「12rじゃないから別物」と判断するのは、少しもったいないかもしれません。

「S-WorksじゃないSL9」は遅いのか?

ここまで来ると気になるところです。

S-WorksじゃないSL9は遅いのか?

もちろん、究極の性能を求めるならS-Worksです。完成車で見た際に、【FACT 12rによる軽量フレーム】【Roval Rapide CLX III】【Roval Rapide Cockpit】【CeramicSpeedのヘッドセットベアリングやボトムブラケット】そして【DURA-ACE Di2 or SRAM RED AXS】

スペシャライズドが持つ技術を惜しみなく投入した、まさに最高峰です。

しかし、SL9の走りを楽しむためにS-Worksでなければならないか?と聞かれると、今回の10rモデルを見る限り、その答えは「NO」だと思います。

135gをどう考えるか

ここはライダーによって考え方が大きく変わるところです。

■レースで1秒でもタイムを縮めたい。

■ヒルクライムで1gでも軽くしたい。

■最高峰の機材を使いたい。

そういう方であればS-Worksを選ぶ理由は明確です。

一方で、

■週末のサイクリング。

■阿蘇へのロングライド。

■仲間とのライド。

■たまにレースやイベントにも参加する。

そういった使い方を考えたとき、

フレーム単体で約135gの差をどう考えるか。

ここは非常に面白いところだと思います。

例えばその予算を、

ホイール
タイヤ
コックピット
サドル
パワーメーター
フィッティング

などに使うこともできます。

バイク全体で考えれば、そちらのほうがライダーによっては大きなメリットにつながる可能性もあります。

そこで注目したい「S-Level」

今回新しく登場したグレードが、S-Level。

これまでの「Pro」に代わる新しいグレードになります。

個人的には今回のラインナップで、かなり面白い存在だと思っています。

S-Levelは、

FACT 10rフレーム
FACT 12rフォーク
SRAM RED AXS
Roval Rapide CL III
Roval Rapide Cockpit

という構成。

参考重量は約7.1kg(56サイズ)

価格は、¥1,430,000(税込)

つまり、「S-Worksほどフレーム重量を突き詰める必要はない。でも完成車としての性能には妥協したくない。」というライダーに向けたモデルです。

S-Worksに非常に近い完成車構成を持ちながら、フレームを10rにすることで価格を抑える。これまでありそうでなかった、面白い立ち位置ではないでしょうか。

Expertはカスタムベースとして面白い

そして個人的にもうひとつ注目したいのが、Tarmac SL9 Expert。

価格は、¥924,000(税込)。

Shimano Ultegra Di2とSRAM Force AXSから選択できます。ホイールにはRoval C38。コックピットは一体型ではなく、Rapideステム+アルミハンドルバーという構成です。

ここを「S-Levelよりスペックが低い」と見ることもできます。

しかし逆に考えると、カスタムする余地がかなり残されている。ということでもあります。

すでにお気に入りのホイールを持っている方。ハンドル幅やステム長をしっかり合わせてから一体型ハンドルにしたい方。将来的にRapide Cockpitへ交換したい方。etc…

そういったライダーにはExpertが非常に面白い選択肢です。まずはExpertで乗り始めて、少しずつ自分好みのSL9に仕上げていく。そんな楽しみ方もできます。

Compはもっと面白いかもしれません

そして今回、

「実は一番化けるのでは?」

と思っているのがCompです。

価格は、¥594,000(税込)。

Shimano 105 Di2またはSRAM Rival AXSを搭載。ホイールはDT R470 Disc。ハンドル周りもアルミ製です。

参考重量は、

105 Di2:約8.21kg
Rival AXS:約8.14kg

となっています。

完成車重量だけを見るとS-Worksとはかなり違います。

ですが思い出してください。

フレームは、FACT 10r、822g。フォークは、FACT 12r。つまり、バイクの土台となるフレームセットはExpertと同じです。ホイールやコックピットをアップグレードしていけば、かなり面白い一台になります。

Rovalアップグレードプログラムとの相性が抜群

前回の記事でも紹介しましたが、現在常設化されている、Rovalアップグレードプログラムが活きてきます。

例えばCompを購入して、最初からRovalのカーボンホイールへアップグレード。さらにRapide Cockpitへ交換。そうすると、

「FACT 10rのSL9を、自分の欲しい仕様で作る」

という選択肢が見えてきます。

最初からすべてが最高峰のS-Works。

完成車として高いレベルに仕上がっているS-Level。

カーボンホイールまで装備してバランスの良いExpert。

そしてカスタムベースとして楽しめるComp。

今回のラインナップは単純に、松・竹・梅 という関係ではないと思います。それぞれに明確な選ぶ理由があります。

実はタイヤも30c

そして個人的にもうひとつ注目したいところがあります。今回のSL9は700×30cのタイヤを標準装備しています。以前のブログでもご紹介した通り、現在ロードバイクでは30cが新しいスタンダードになりつつあります。

これは単純に快適性を高めるためだけではありません。適切な空気圧で使用することで路面の細かな凹凸にタイヤが追従し、実際の道路で効率よくスピードを維持する。

これもまた、

「実際の環境でどうすれば速くゴールできるのか」

というSL9のTime to Finishという考え方につながっています。

エアロだけ。

軽さだけ。

剛性だけ。

タイヤだけ。

どれかひとつを突き詰めるのではなく、

ライダーを含めたシステム全体として速くする。

SL9を細かく見ていくと、この考え方がいろいろなところに表れています。

S-Worksを選ぶべき人

では結局、どれを選べばいいのでしょうか。ここからは、個人的な意見も多数含みますので、参考程度にしていただけると幸いです。

まずS-Works。

・レースで1秒でもタイムを縮めたい
・ヒルクライムで重量を徹底的に削りたい
・完成車として最高峰を求めたい
・機材に一切妥協したくない

そんな方は、やはりS-Worksです。

FACT 12rの687gという重量は大きな武器ですし、完成車全体を含めて最高峰のパーツで構成されています。

S-Levelを選ぶべき人

・S-Worksに近い完成車性能が欲しい
・RED AXSなど最高峰コンポーネントを使いたい
・一体型コックピットも最初から欲しい
・購入後に大きくカスタムせず、そのままレースで使いたい

という方。フレーム重量の135gにこだわらないのであれば、非常に完成度の高い一台です。

Expertを選ぶべき人

個人的に幅広い方へおすすめしやすいのがExpertです。

・Ultegra Di2やForce AXSで十分
・カーボンホイールは最初から欲しい
・ポジションをしっかり決めてから一体型ハンドルにしたい
・将来的なカスタムも楽しみたい

という方。約92万円という価格は決して安くありませんが、FACT 10r+FACT 12rフォークというフレームセットを考えると、非常に魅力的な構成です。

Compを選ぶべき人

そして、

・SL9に乗りたい
・最初の予算を抑えたい
・自分好みにカスタムしていきたい
・すでにホイールを持っている

という方ならComp。特にすでにRovalなどのカーボンホイールを持っている方なら、かなり面白い選択肢になると思います。

完成車の8kg台という数字だけで判断せず、「822gのSL9フレームを約59万円から手に入れられる」という見方をすると、印象がかなり変わるのではないでしょうか。また、同コンポーネントの他ブランドの完成車と比較しても、コストパフォーマンスに優れているのではないでしょうか。

10rの登場で、SL9が一気に身近に

今回FACT 10rモデルを詳しく見てみて、改めて感じるのが、「S-Worksじゃなくても、ちゃんとSL9なんだ」ということです。

もちろんS-WorksにはS-Worksにしかない魅力があります。

FACT 12rによる圧倒的な軽さ。最高峰のパーツ構成。そこに価値を感じる方にとっては、間違いなく特別な一台です。

しかし今回の10rは、空力性能、剛性、コンプライアンスといったSL9の根幹を受け継ぎながら、重量差を約135gに抑えたフレーム。しかもフォークはS-Worksと同じFACT 12r。

こうして考えていくと、

「Tarmac SL9の走りを楽しむ」という目的なら、10rは決して妥協ではありません。

むしろライダーによっては、10rを選んで浮いた予算をホイールやコックピット、タイヤ、フィッティングなどに使ったほうが、理想の一台に近づける可能性もあります。

まとめ

「どのSL9を買うか」ではなく「どんなSL9にするか」

これまではTarmac SL9が気になっていても、「S-Worksはさすがに予算的に……」という方も多かったと思います。しかし今回

S-Level:¥1,430,000(税込)
Expert:¥924,000(税込)
Comp:¥594,000(税込)

と一気に選択肢が増えました。

■S-Worksを買って最高峰を味わう。

■S-Levelを買ってそのままレースで戦う。

■Expertをベースに少しずつアップグレードする。

■Compに手持ちのホイールを組み合わせて、自分だけのSL9を作る。

どれも正解です。

今回のFACT 10rモデル登場によって、「Tarmac SL9を買うか、買わないか」から「どんなTarmac SL9にするか」へ。選び方そのものが変わったように感じます。

レースで勝ちたい方はもちろん、阿蘇を気持ちよく走りたい。ロングライドをもっと速く走りたい。今まで乗ってきたロードバイクから、もう一段上の走りを体感してみたい。そんな方にもぜひ注目していただきたいバイクです。

「自分ならS-Worksと10r、どっちがいい?」

「Compを買ってホイールを交換するのとExpertならどちらがおすすめ?」

「今持っているホイールをSL9で使いたい」

など、グレード選びやカスタムについてもぜひスタッフまでお気軽にご相談ください。

Tarmac SL9は、選び方まで含めて面白いロードバイクになっております。

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